どんな仕事でも1人で全てが完結するものはないと思います。
様々な人材が力を合わせて、商品・サービスを提供しますよね。
もちろん、医療でも同じです。
今回は、救急医療の現場のお話です。
鳥取県の病院で医師から消防の救命救急士へのパワハラが発覚し、当時の救命救急センター長が解任される事態にまで発展してしまいました。
読売新聞の調査では、消防職員の2割超が医療機関でハラスメントを経験しています。
逆に、医療機関の2割が消防職員とトラブルを経験しています。
どっちもどっちな感じがしますね。
以下は、自分と同僚の経験をもとにした個人的な見解になります。
まず、医師側に立って言いたいことは、「消防署や消防隊員によって全然レベルが違う」ということです。
これは私の経験ですが、昔、当直バイトをしていた病院に救急搬送の連絡が来ました。
「80代女性、転倒して体動困難、バイタルは安定、既往歴なし」とのこと。
設備が限られた中で対応できそうな限り、基本的には断らないスタンスなので、快く受け入れました。
救急車が到着し、患者を見て、すぐにおかしいと気づきました。
苦悶症状で息も絶え絶えといった状態でした。「バイタル安定!?」
右下肢を見ると、広範囲に発赤・腫脹が見られました。「そもそも転倒していないだと!?」
蜂窩織炎などの筋骨格系の感染を考えるのですが、場合によっては、緊急で切開排膿をしなければならないですし、既往歴も隠されていて、抗菌薬治療の継続もハイリスクな症例でした。
この時は流石にイラッとしましたね。
で、この消防署はその後、同じ過ちを3度繰り返したので、救急要請は全て断ることにしました。
この消防署、実は、勤務していた病院からかなり離れている消防署でした。
勝手な想像ですが、周りの病院に断られていたのではないかと思っています。
一部の消防署はまさに「運んだら終わり、あとはよろしく」感が非常に強く、受け入れてもらうためなら手段を選んでいません。
都合の悪い情報は、とりあえず搬送した後に伝えてきます。
救急隊の搬送時間の短縮を競っているのでしょうか?
次に、消防側に立って伝えたいことは、「病院や医師によって全然レベルが違う」ということです。
同じですねww
大学や総合病院に勤めていると、他科の先生と関わることが多くなります。
救急部に出向していた経験があるので内情は比較的詳しいのですが、科によってフットワークというか、救急対応への慣れというか、全く異なります。
以前、救急部としてコンサルト(相談・紹介)した患者の診察を断る事例がとある科に集中していまして、問題になったことがあります。
「救急部は受け入れるだけで、後は見ないでしょう?」
「最後まで責任持って診ろよ」と言った意見がありますが、「じゃあ、救急隊の連絡から、初期対応まで全部よろしくお願いします」と言いたいところです。
医師の中にも、一定数、相手の立場に立って物事を考えるのが苦手な人がいます。
※補足ですが、逆に救急一筋でめちゃくちゃ厳しい医師は、消防隊にも厳しいです。勿論、医師に対しても厳しいですので、急に来て、こんなのに出会ってしまったらビビりますよね。
消防職員と医療機関のお互いのトラブル割合が同数なのは、お互いの職場で5人に1人位が誠実に働いていないだけなんじゃないかと思います。
対等な職種として尊重する意識を持ちましょう。
ご意見やご感想、間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい