大学病院の教育・研究時間の問題について
近年、医師の研究時間が減少しているという報告が医療界で相次いでいます。
この傾向は、医療の「品質」や「革新性」に関わる重要な要素であり、深刻な懸念を引き起こしています。
なぜ医師の研究時間が減少しているのか、その要因と影響を調べてみました。
今回は、少し専門的過ぎる感があります。
大学病院で働く医師の環境を含めて解説しておりますので、どんな感じか知りたいなぁ〜って思う優しい人は読んでみて下さいww
早速ですが、要因については、以下の4点があると考えます。
1. 診療時間の増加
2. 医療制度の変化
3. 学術環境の変化
4. 専門性の深化
診療時間の増加について
現代の医療現場では、患者数の増加や医療技術の進歩に伴い、医師の診療時間が増加しています。
患者さんのニーズに応えるために、医師は診療に多くの時間を費やし、研究活動に割ける時間が減っている可能性があります。
以下は、文部科学省「今後の医学教育の在り方に関する検討会」の資料を参照しています。
図で示すように、近年では講師を除く役職の診療時間が大幅に増加し、研究時間は減少しています。
※ちなみに、大学病院の偉い順:教授=看護師>准教授>講師>助教>修練医>>>研修医
これは、後述しますが、大学病院に求められるものが高度な医療である以上、年々、進歩する医療技術の対応に追われていることに他なりません。
必要か不必要かに関わらず、その判断も含めて、近隣の病院から多くの患者さんが紹介されてきます。
大学病院に受診した経験がある人には分かると思いますが、死ぬほど待ち時間が長いです。
これは、「そもそも紹介される患者さんが、近隣の病院でも判断に困る症例であること」、「そんな症例の問診から診察、診断は当然時間がかかること」、「最終的に専門家が様々な治療法からニーズに合ったものを説明する時間が必要であること」などが原因です。
患者さんが待っている間、医師は休むことなく診察しているので、診療時間はどんどん伸びていきます。
※ほんとは待たせたくないんです。ごめんなさい。
医療制度の変化
医療制度の変化により、医師は経済的な圧力や実務上の負担が増大しています。
診療報酬の改定や患者さんのニーズに対応するため、医師は業務実績に関わらない研究活動よりも実務に時間を割くことになります。
大学病院の経営は火の車状態です。
なぜなら、大学病院は診療報酬(保険点数)の採算に合わない検査や治療を最後の砦として行わなければならないからです。
それが医療の本質でしょうと言われればそれまでですし、利益を追求しているように誤解を与えますが、それでもそこで働いている職員がいるので健全な経営をするべきだと思います。
※診療報酬次第なので、どんなに頑張ってもどうしようもないのですが。。
実情を以下の図でお示しいたします。国公立の病院は概ね損益率はマイナスです。
医師がお金の話をすると反感を買うかもしれませんが、敢えて少し触れていきます。
大学病院の役職別の平均給与ですが、
研修医の平均年収:430万 (20代後半大卒男性の平均年収:370万(賞与含まず))
助教の平均年収:530万 (30代後半大卒男性の平均年収:500万(賞与含まず))
講師の平均年収:630万 (40代前半大卒男性の平均年収:540万(賞与含まず))
准教授の平均年収:720万 (40代後半大卒男性の平均年収:580万(賞与含まず))
教授の平均年収:900万 (比較対象が分からないです。副社長?)
です。これは大学病院から支給される給与です。
※医師転職コンシェルジュ / 賃金構想基本統計調査(厚生労働省)より転載
私はもっと少なかったのですが、地域によって差がありますので、まぁまぁ納得の値なのかなと思います。
これだけ見れば、世間に与えられている印象と比較して低いと感じたのではないでしょうか?
実際は、研修医を除いて、+αで近隣病院への勤務(バイト)や休日/夜間の当直業務を行います。
この中で研究をしようと思ったら、通常の診療時間後に行うことになるのですが、動物実験・細胞実験などはやり始めたら余裕で数時間かかるので、めちゃめちゃしんどいです。
指示は出せても、自分でしようとは中々思わないでしょう。
※通常の診療後が何時になるのかは察して下さい。
学術環境の変化 / 専門性の深化
医学の進歩は急速であり、新たな研究や治療法が頻繁に登場しています。
さらに、ますます専門化しており、自身の専門分野において高度な知識を持つ必要があります。
医師は最新の情報や技術を追いかける必要があり、そのために研究に時間を割く余裕が減少している可能性があります。
幸か不幸か、現代では、情報をすぐに手に入れることができるので最悪ですw
カンファレンスでは、偉い先生達に「これが患者さんにとってベストだ!」と考える治療を納得してもらうために、プレゼンしないといけません。
そのためには多くの論文を読む必要があります。
今では良い経験をしたと思えますが、大変でした。
学会発表を聞いていると、この経験がある先生の多くは発表が上手だと思います。
そういった先生はもれなく、患者さんへの説明も上手です。
どういった影響が考えられるか?
医師の研究時間の減少は、医療の「品質」や「安全性」に影響を及ぼす可能性があります。
正しい研究方法を知らないと、間違った情報が世に流れることになります。
普通はありえないと思いますが、世の中にはお金を積めば通るような、ハゲタカジャーナルと呼ばれるものがあります。
この話は、また別の機会に。
医師の研究活動を支援するための制度や環境の整備が求められると思います。
これらの話は、臨床の最前線で働く医師だけではなく、研究をしたくて大学院生になった医師にも起こっています。
日本の大学院は世界的には珍しくお金を払って入学しないといけないので、毎年50-60万程度の学費を納めないといけません。
したがって、大学院医師は働きながら研究しないといけないので、研究=働くことである一般的な研究職の方とは少し違います。
※大学院医師は多くの場合が無給医なので、バイトをしないと死にます。
研究者が政治に関わっている姿が想像できないので、政府が実情の把握をできていないのは仕方がないのかなとも思いますが、このままでは、間違いなく世界に置いていかれます。
いや、ほんとに、裏金とかキックバックとかしょうもないことでバタバタしている姿を見ると情けないです。
完全に愚痴ですw
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おしまい。