7月7日の東京都知事選
久しぶりの投稿になります。
最近は、業務以外の時間で研究論文の作成と投稿、そのリバイスに追われております。
記事のネタは溜めているので、まとめて発信出来ればと思っております。
さて、本日は東京都知事選の最終日になります。
過去最高の盛り上がりですね。
私自身は都民ではないので、参加できないのが残念です。
今回はメディアでも取り上げられる組織票について、私自身の経験をお話します。
一応、医師ですので、医師会というものと多少なりとも繋がりができます。
直接ではなくとも、勤務先の病院とその関係が強ければ、職員に医師会が擁立する候補への投票を促されることがあります。
当初から一歩引いて見ておりましたが、東京都知事選ともなるとその規模は計り知れないと思います。
既存の政党に頼らない若い候補者に心からエールを送りたいと思います。
そして、一人でも多くの方が投票してくださることを願っています。
どうしても一言物申したかったので、急遽感情的にブログを更新していますw
おしまい。
千葉科学大学の公立法人化は誰のため?
「薬事日報」によると、大学側は、特に2016年から入学定員割れが続き、事業活動収支で赤字となっている薬学部の現況に対して、「公立化すれば全国から志願者が集まるため、学生の確保が期待できる」と説明しているようです。
果たして、本当でしょうか?
今回は、薬学部の新設ラッシュに伴い乱立した学部の再編について考えたいと思います。
千葉科学大は薬学部、看護学部、危機管理学部の3学部を保有している大学です。
市が77億円の補助金に加えて、市有地の無償貸与したことで、異例の速さで開学された大学になります。
そんな市税を盛りだくさんに投与した大学が、学生確保に苦戦し、赤字経営に陥る中、2023年10月に銚子市に公立大学法人化の要望書を提出しています
ここで出てくるのが、運営元の加計学園です。
もう嫌な予感しかしません。
書き直すと、「千葉科学大学(加計学園)が銚子市に対して、赤字経営の為、公立大学法人化の要望書を提出した」です。
こう書くと、怖いですね。
ただの学校法人が経営難を理由に、さらなる公費の負担を要求しているのです。
気になる方は、もっと調べてみて下さい。
実際に公立化をした場合に得られるメリットとしては、
教育の質とアクセス
教育の質の向上:安定した財政基盤が確保されるため、教育環境や研究設備の充実が期待できる。
アクセスの向上:公立大学化することで、授業料が低減される場合が多く、より多くの学生が質の高い教育を受けられるようになる。
財政面と地域経済
財政安定性:安定した財政支援が見込まれるため、大学運営がより安定することにより、長期的な教育計画や研究プロジェクトの実施が可能となる。
地域経済への貢献:公立大学としての地位確立は、地域社会における大学の役割を強化し、地域経済の活性化にも寄与する。
社会的・政治的影響
地域社会との関係強化:地元自治体との連携が強化されることで、地域のニーズに応じた教育・研究プログラムの開発が促進される。
真面目にメリットを書きましたが、当該の大学にメリットを有益に活用する方法はないと思います。
薬学部に関しては、卒業・国家試験合格率ともに最低ランクです。
以下の記事を参照されて下さい。
これが全てなのですが、現時点で質の高い教育が行われていると思いません。
優秀な学生は、この結果を見て受験はしないでしょう。
今後、革新的な改革が行われない限り、どんなに授業料が減額されようと、教育の質・アクセスが向上することはありません。
なぜ、そこまでして学校の存続を希望するのか正直分かりません。
そこには、天下りなどの闇があるのでしょうか?
そんな勘繰りをしてもおかしくないですよね。
大学は誰のためであるのか、よくよく考える必要があるでしょう。
ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい。
無保険なら1.5倍です
「仮放免中のクルド人、インフルエンザの診療費24万円「無保険なら1.5倍」ルールは人権上の問題なし?」という記事を拝見しました。
仮放免中のクルド人少女(15歳)が発熱・意識消失で救急搬送、インフルエンザの診断で一泊入院したようです。
仮放免者は難民申請が不認定もしくは在留期間を超えてオーバーステイなどで在留資格を喪失した人々です。
基本的には、入管施設への収容対象ですが、個々の事案により入管施設外での生活も可能です。
しかしながら、就労ができないため、健康保険への加入ができません。
本来は保険が適応され、自己負担額が減るはずですが、無保険であったため、医療費が全額自己負担、さらに1.5倍になったという話です。
結論から言って、病院の対応は全く問題ないと思います。
医療は人間の基本的な権利であり、国籍に関わらず、誰に対しても提供されるべきだと思います。
病院は本来の役割を全うしています。
医療費の全額負担は無保険であれば当然です。
病院の設定した「無保険者は1.5倍」が適切であるかどうかは別として、病院が対応するリスクや手続きを考慮しての設定だと考えます。
医療費負担に対して、病院に人権を問うのはお門違いだと思います。
このような記事は社会的な弱者が置かれている現状を知る上では非常に良いと思います。
しかしながら、人権を守る役割を果たした病院を的に挙げてまで、注目を得ようとするのは道徳観が欠如しているように思います。
無保険である原因や背景に目を向けるべきではないでしょうか?
記事の最後で「富裕外国人の医療ツーリズム」との関係を言及しておりましたが、根本である無保険であることとは全く別問題です。
現場の人間から言わせてもらうと、救急外来で働いている人間で患者がお金に見えている人はいないです。
このクルド人少女はどのような経緯で15歳まで生きてきたのでしょう?
ご両親はどうやって生活してきたのでしょう?
なぜ働けないのに生活できているのでしょう?
親族からの仕送りでしょうか?不法就労でしょうか?
いずれにしろ、長期滞在もしくは労働により無料で経済的利益を享受していますが、税金は納めていないはずです。
したがって、公平性を担保するためには必要な支出だと考えます。
ちなみに、アメリカでは救急外来を無保険で受診したら最後、数百〜数千ドルです。
さらに、地域によって医療費が異なり、都市部や観光地では高い傾向があります。
日本が異常なのです。
社会保険は、保険料を払った人に給付がかえってくることが前提です。
私たちは一人では生きていけません。
全員が協力して今の社会があり、誰かの頑張りが、誰かの助けになっています。
国民皆保険制度は国民全員で頑張って維持している制度でルールです。
しかし、国民皆保険制度には税金が投入され、所得の再分配が関わるようになっており、所得により実質保険料の不均衡が起こっている歪な状態です。
持続可能かどうかは疑問ですが、少なくとも制度の輪に入るために最低限必要な納税はしていただきたいです。
もちろん、難民や移民などの弱い立場にある人々が、医療費によって不当な負担を強いられることがないよう配慮しなければなりません。
働きたくても働けない、日本に住む人間として必要な勤労の機会を得るため/与えるためにできることを考えるべきでしょう。
クルド人少女は何も悪くない、手を差し伸べられない日本の制度の問題です。
トルコ政府との関係で難民申請に関しては、かなりナイーブで外務省も頭を悩ませる問題でしょうが、昨日今日に始まった問題ではないでしょう。
何がどこまで進んでいるのか、発信可能な情報はないのか、透明性のない政治のままでは支持も得られないと思います。
ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい
ダニに噛まれたらどうする?対策を解説
5月に入りかなり暖かくなりましたね。
天気が良い日には、山登りやハイキングを楽しむ方々が増えたのではないでしょうか。
そんな季節になると、救急外来には「ダニに噛まれた」と患者さんが来るようになります。
今回は、「ダニ咬傷」について解説していきたいと思います。
とりあえず、困ったらこの記事を読んでいただければ大丈夫です。
「Razai MS, Doerholt K, Galiza E, Oakeshott P. Tick bite. BMJ. 2020 Aug 13;370:m3029」を元に参照文献を孫引きして調べております。
ダニ
主に野外に生息し、哺乳類(ヒトを含む)や鳥類、爬虫類から血を吸う節足動物です。
ダニは日本紅斑熱(JSF, リケッチア症)やライム病(LD, ボレリア症)などの感染症を伝播します。
ダニ媒介感染症は特定の地域に比較的限定されていて、効果的な抗菌薬もあるため、日本ではダニによる咬害をそれほど恐れない傾向がありました。
しかしながら、2013年に重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)が報告され、注目を集めています。
日本では咬傷を生じるダニは6種類いて、地域によって異なります。
SFTSを媒介するマダニは主に「西日本」にいます。※最近、福岡で高齢女性が死亡しています。
また、ライム病を媒介するマダニは「市街地などを除く北海道・青森の全域」や「本州・四国・九州の山林部(標高900m以上)」に存在します。
「ダニに噛まれた!」対処法
(1)ダニを確認する
まずは、ダニを確認して吸血の有無を判断しましょう。
血液を吸っていればお腹が大きく膨らんでいます。
(2)かまれてからの時間を確認
ダニ咬傷はほとんど症状がなく、気付くまで2~3日、長いと1週間ほどかかることがあります。
ダニがかみついてから24時間経過すると食いつきが強くなり、攝子では除去が困難になります。
噛まれてから3日以上経過した場合はマダニ媒介感染症のリスクが高くなるため、外科的除去がより強く推奨されます
(3)ダニの除去
基本的にダニの体には触らないことが理想です。
なぜなら、体を押すと病原体や毒が体内に入ったり、体をつまんで除去をしようとするとダニの口が残ってしまったりします。
したがって、1つ目の方法は「無鈎攝子でダニの口器をつかんで除去する」です。
2つ目の方法として、「Tick twister」という動物用のダニ除去器具を用いる方法です。
ダニの口は縦方向の力に強いため、攝子で引っ張るには力がいります。
Tick twisterを皮膚とダニの間に挟んで軽く持ち上げながら回転させることで非常に簡便に除去できます。
口器を意識せずに使用できるのも利点です。
口が深く入って把持できなかったり、ダニ咬傷となってから3日以上経っている場合は外科的切除が必要になります。
その場合は、「ダニの周囲を円錐状に切除して皮膚ごと除去」します
(4)除去後の処置
まずは創部を洗浄します。
基本的に、マダニ媒介感染症のリスクは低いため、抗菌薬の使用によるリスクがベネフィットを上回ります。
したがって、ダニにかまれた場合に全例で抗菌薬を使用することは推奨されていません。
しかし例外として、北海道や東北地方の山間部でダニに噛まれた場合、吸血して肥大化していれば、前述した「ライム病」のリスクが高いため、ドキシサイクリン(200mg)単回投与が推奨されます。
ここからは個人的な見解になります。
ダニに噛まれても、比較的早期に発見でき、丁寧に口器を除去できれば問題ありません。
実際に、感染症に罹患したどうかは、数日待って症状が出ないと分かりません。
症状自体も、一般的な「かぜ症状」のようなものでつかみどころがない場合がほとんどです。
皆さんもダニに噛まれた際は慌てず対応するようにしましょう。
ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい。
酒さ治療の方法と注意点
女性が知っていて、男性が知らない単語の一つに「酒さ」があります。
かく言う私も妻に教えてもらうまでは、医療従事者にも関わらず知りませんでした。
調べてみると、推奨される治療法がなく、皮膚科の友人に聞いても、人によって言うことが異なります。
今回は、そんな「酒さ」について詳しく調べてみました。
以降は、「van Zuuren EJ, Arents BWM, et al. Rosacea: New Concepts in Classification and Treatment. Am J Clin Dermatol. 2021 Jul;22(4):457-465」「Buddenkotte J, Steinhoff M. Recent advances in understanding and managing rosacea. F1000Res. 2018 Dec 3;7:F1000 Faculty Rev-1885」「Gold LS, Papp K, et al. Treatment of Rosacea With Concomitant Use of Topical Ivermectin 1% Cream and Brimonidine 0.33% Gel: A Randomized, Vehicle-controlled Study. J Drugs Dermatol. 2017 Sep 1;16(9):909-916」を元に参照文献を孫引しながら調べております。
「酒さ」は、主に顔面中心部(頬、顎、鼻、額)と目に影響を及ぼす慢性炎症性疾患です。
紅潮、持続性紅斑、炎症性丘疹/膿疱、および毛細血管拡張症を特徴とする、所謂、「赤ら顔」です。
通常30~50歳で発症しますが、どの年齢でも発症する可能性があります。
最近の系統的レビューでは、世界的な「酒さ」の有病率は成人人口の5.5%と推定されています。
以前の研究では、女性や白人に多いとされていましたが、性別や肌の色で認識されていなかった可能性があり、現在では、男女や人種によって有病率に差はない可能性が高いと報告されています。
「酒さ」の分類
現在、「酒さ」は4つのサブグループに分類されています。
以下にまとめているので、ご参照ください。
この分類に関しては、実臨床では分類しにくいとの意見もあるようです。
「酒さ」の病態メカニズム
病態のトリガーとなる原因は、主に「細菌」「ニキビダニ」「熱」「刺激性」「紫外線」になります。
これらが根本的な原因になり、様々な症状を引き起こすと考えられています。
基本的には、これらの原因を回避することが重要になってきます。
以下にまとめております。
1点だけ、「ブリモジニン」はこの経路を遮断して、症状抑制に効果があると報告されています。
※日本では未承認です。
治療法
患者特有の誘因の特定と回避、セルフケア/スキンケア対策に加えて、「酒さ」の特徴への対症療法が治療のメインになります。
「尋常性ざ瘡・酒さ治療ガイドライン」によると、丘疹膿疱型に対して「メトロニダゾール」が推奨されているのみです。
ご存知の方にはお馴染みの「ロゼックス」です。
ちなみに、海外では、
「紅斑」:局所ブリモニジン、オキシメタゾリン
「丘疹/膿疱」:局所イベルメクチン、メトロニダゾール、アゼライン酸、放出調節型経口ドキシサイクリン(40mg)
などが提案されています。
また、レーザーおよび光ベースの治療は、毛細血管拡張症、紅斑に使用できます。
光ベース治療は、美容医療では「フォトフェイシャル」と呼ばれており、「Intensed Pulsed Light(IPL)」を用いた治療法です。
日本でも、報告はありますがエビデンスレベルが低く、例によって、長期での有効性・安全性が示されてはいません。しっかりとした臨床試験を待つべきだと考えます。
現状では、残念ながら根治を期待できる治療法がないとの結論になります。
前述した「ブリモニジン」は日本未承認ですが、「ミルバソゲル」として自由診療で販売しているクリニックがあります。
こちらに関しても、根治ではなく、あくまでも対症療法であることは認識するようにしましょう。
ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい