皆さんは「夜間痛」と言えば、どんなことを思い浮かべますか?
私は「肩の痛み」です。
これは、「腱板損傷」を疑う場合には問診で必ず聞く項目だからです。
一昔前は、四十肩・五十肩を他人事のように感じていましたが、そうも言っていられない年齢になりました。
今回は、私の未来のためにもそんな「夜間痛」について調べてみました。
下図は、腱板損傷について簡単に説明したものです。
以降は、「Castro-Contreras E, Valdez-Pardo ME. Lesiones del manguito rotador con dolor nocturno y calidad de sueño antes y después del tratamiento [Rotator cuff injuries with nighttime pain and sleep quality before and after treatment]. Acta Ortop Mex. 2022 Jan-Feb;36(1):33-38.」をもとに、参考文献を孫引きしながら調べております。
この論文では、
①腱板損傷患者の91-93%に「夜間痛」を認める
②「夜間痛」の程度は平均でVAS 5.5(中等度)
③腱板損傷の「重症度」と「睡眠の質」との関連は不明
などが挙げられています。(簡単に抜粋してます)
このように、「夜間痛」の訴えが多いということは分かっているのですが、意外にその原因は分かっていません。
ここでは意外にも日本の論文がそのメカニズムについて考察しています。
結論から言うと、「肩峰下滑液包圧の上昇」が原因の1つとされています。
※肩峰下滑液包は、上図でも記載していますが、肩関節内のクッションのような役割をしています。
体位を変えると、肩峰下滑液包圧が変化しています。
理由としては、
①寝ると、腕の重さにより下に引っ張られていた力が無くなり、肩峰下滑液包圧が上昇
②「腱板損傷」では、肩を支える筋肉・腱が損傷しているので、上腕骨頭を支えれなくなり、肩峰下滑液包圧が上昇
です。(下図参照)
他の論文にも、「インピンジ陽性」・「内旋角度制限(うちわを内側に扇ぐ動作)」で有意に「夜間痛」を認めているため、「肩峰下滑液包圧の上昇」が関与している可能性が高そうです。(※ここは難しいですね。すみません)
さらに、人体の「痛み」は「炎症反応」と同義なのですが、夜間に限定的な「肩の炎症反応」が原因である可能性も示唆されています。
前述した「肩峰下滑液包」は炎症が起こりやすく、その部分には、「新生血管」という血管が増生されます。
これは、基礎研究やヒトへの造影検査でも分かっています。
これらのことから、「夜間痛」の原因は以下になりそうです。
ここからは、個人的な見解です。
じゃあ、どうすれば解決するのかについてですが、まずは、「鎮痛薬で炎症を抑える」ことです。
さらに、肩に関しては、痛くて動かさなくなった結果が「四十肩・五十肩」なので、肩が固まらないように、痛くてもしっかり動かすことが重要です。
これは、「腱板損傷」の基本的な治療方針であり、3ヶ月〜半年かけても痛みが取れない場合は手術を検討します。
※怪我をした所に「カサブタ」ができるように、上記の期間で損傷した部位が他の組織で置き換わり、肩関節が安定化するためです。
また、「夜間痛」には、肩の後ろに枕などを置いて、傷ついて不安定な肩を安定化させると痛みが軽減されるとされています。
そのほかに、「新生血管」の血流を止める塞栓術という方法もありますが、正直、あまりメジャーな方法ではありません。
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おしまい