闇医者Blog

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小児救急 肘内障

子供の手を引っ張ったら急に腕を上げなくなって号泣されたことはありますか?

今回は、救急外来で頻繁に遭遇する「肘内障」についてです。

 

以降は、「Yamanaka S, Goldman RD. Pulled elbow in children. Can Fam Physician. 2018 Jun;64(6):439-441」の論文をもとに、参照文献を孫引きしながら調べております。

肘内障

肘内障の定義は、「伸展した回内腕の軸方向への牽引」または「急激な牽引」によって生じる橈骨頭の亜脱臼とされています。

典型的な受傷機転としては、「腕を身体の下に入れて寝返りを打つ」や「急に手を引っ張る」などがあります。

肘内障

 

評価方法

最も重要なのは、「骨折」の有無です。

肘内障の場合は、一般的に

・患側の腕を動かさないようにし、体に密着させる

・損傷した肘に明らかな腫脹や変形は認められない

・上記の典型的な受傷機転がある

といった所見が認められます。

 

症状がそれ以外の場合、例えば

・患側の腕が動かない、腕を触らない

・損傷した肘に明らかな腫脹や変形を認める

・手指に知覚障害がある

・高所からの転落・転倒などの受傷機転がある、もしくは、受傷機転が不明確である

このような場合は、肘の画像診断(X線)を考慮すべきです。

特に、「上腕骨顆上骨折」はしばしば見逃される外傷なので注意が必要です。

 

整復法

整復法には以下の方法があります。

①回外法:肘関節を90°の状態で、母指で橈骨頭を押さえる。その後に、前腕を回外しながら(手のひらが上に向かせながら)、肘を屈曲する方法。

②回内法:肘関節を90°の状態で、母指で橈骨頭を押さえる。その後に、前腕を回内する方法(手のひらを下向きにする)

これらの整復法の比較検討した論文は存在しますが、エビデンスレベルは高くないため、現状はどちらでも良いと言えます。

 

しっかり整復できた場合は、母指にクリックを触れます。また、お子さんは腕を上げて「抱っこ、抱っこ」といった動作が可能になります。

整復後は普段通り生活していただいて大丈夫ですが、再脱臼する場合もあるため、注意しましょう。

 

ここからは個人的な見解です。

 

日中の外来にはあまり来ないのに、夜間に多い症例です。

幼稚園や学校が終わって、家で遊んでいる際に起こすのでしょう。

初めて整復したのは研修医の時でしたが、お子さんもご家族も安心して帰って下さるので、医師としてのやりがいを感じた疾患の一つです。

整復方法まで記載しましたが、ご自身のお子さんに痛い思いをさせるのに抵抗がある人が大半だと思いますので、無理せず病院に行って下さいね。

 

ご意見・ご感想や間違いのご指摘お持ちしております。

 

おしまい。