闇医者Blog

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整形外科で治らない腰痛の理由と解決法

ジャパネットではありませんが、皆さんも何度か経験がありますよね。腰痛。

 

30歳も過ぎると体力の衰えからか、身体のあちこちが痛い、、

書いていたら、本当に通販ショッピングみたいな口調になってきました。

 

今回は、腰痛の要因と現実を解説致します。

以降は、「Knezevic NN et al. Lancet. 2021 Jul 3;398(10294):78-92」の論文をもとに、参照文献も孫引きしながら調べております。

腰痛

腰痛の分類は、「侵害受容性」・「神経障害性」・「非特異性」に分類できます。

腰痛の要素は、「椎間関節性」・「椎間板性」・「筋筋膜性」が挙げられます。

「腰痛」、ここでは一般的に病理解剖学的要因の特定できない非特異的腰痛を指し、全体の約80%を占めます。

 

世界的な有病率は、女性に多く、他の年齢層よりも40-69歳が多い。

近年では、小児の腰痛も増加しており、15歳では46.7%も腰痛を自覚している。さらに、青年期の腰痛の経験は、その後の成人期での腰痛発症の可能性が倍高いことが報告されている。

また、腰痛のリスクは、「荷物の重さ」「持ち上げる回数」のみが明確に腰痛発症と関与している。

 

急性腰痛症(ぎっくり腰)

腰痛といえば、「ぎっくり腰」ですね。

原因は、「身体的要因(不良姿勢etc)」、「心理社会的要因(疲労感etc)」とその組み合わせとされています。

皆さんが病院を受診される際は、何か大きな病気なのではないかと考えると思います。その際に参考になるのが、”Red Flag Sign"です。

Red flag sign

上記の症状がある場合は、ちゃんと医師に伝えて下さい。

その場合は、腰椎以外(大動脈瘤or解離)や特異的疾患(感染、圧迫骨折、変形性関節症、悪性腫瘍、神経根症etc)を疑い精査を検討します。

しかしながら、それでも多くの方が非特異的腰痛と診断されます。

日本では、ルーチンとして画像検査が施行されますが、実は推奨されてはいません。

MRI検査まで施行しても、無症状の人の椎間板膨隆(←ヘルニアなどを疑う所見)の有病率は、50歳で60%、80歳で84%とされているので、特記すべき神経症状がなければ、基本的には撮影するだけ無駄です。寧ろ、医療資源の無駄使いを自覚しなければなりません。

海外では保険の適応外と判断される場合があるため、「腰痛」で救急搬送されたとしても、半分程度の患者にしか画像検査を施行しません。その中でも、少なくとも半数は保険適応外で法外な金額を請求されます。

日本に生まれて良かったと思います。

 

腰痛の予防

危険因子への曝露を制限することが最も重要です。

前述したように、腰痛は「身体的要因」、「心理社会的要因」に加えて、「加齢」を含めて対処していく必要があります。

こちらも前述しましたが、持ち上げる物の「重量」・「回数」のみが明らかなリスクファクターなので、人生において、なるべく重いものを持たないようにするのが、腰痛に対しては究極の正解です。

※しかしながら、重いものを持たない生活は、筋肉・骨に負担(ストレス)がかからないため、脆弱性も招くでしょう。

腰痛の要因

 

現実的には、

1)「加齢」に伴う「変性」は防ぐことができないため、「筋力維持」に努めること。

2)「身体的要因」に関しては、「作業姿勢・環境」を改善すること。

3)「心理社会的要因」に関しては、「自己管理」としか言いようがありません。

 

腰痛の治療

基本的には、急性(ぎっくり腰)や慢性腰痛に対して、特定の治療法はありません。

重要なのは、「腰痛に対する教育」・「痛みを軽減すること」のみです。

※皆さんは医師から「教育」を受けたことはありますか? 受けたことがある方は、いい人に出会えていると思いますので、安心して下さい。

 

現在では、「腰痛=安静」は避けるべきだとされているので、「鎮痛薬でドーピングしながら、可能な限り活動性を保つ」が正解です。

いや、分かります。そんなこと言っても痛いから無理だという人もいるでしょうが、それしかないんです。諦めて下さい。別のことを考えながら、変な姿勢で物を持ち上げた自分を呪って下さい。

「教育」が重要と報告されているのは、「腰痛は劇的に良くはならないと自覚すること」と「科学的根拠に基づかない民間療法から自信を守ること」が、結局は、疾患に向き合い治療に有利であることがわかっているからです。

 

ここからは個人的な見解です。

 

「鎮痛薬でドーピングしながら、可能な限り活動性を保つ」に僕も大賛成です。それしかないと思います。

持続的な腰痛に悩まされる人は確かにいますが、初期治療で「教育」を十分に受けていないか、腰椎疾患でない可能性があると思います。

また、「腰痛」持ちの方は、スポーツ選手を含めて、ほとんどで身体の硬さが目立ちます。それは、スポーツ少年少女でも驚くほど当てはまります。

※近年の小児の腰痛は、運動強度の増加に問題があるのではないかと思っています。適切なトレーニングでなければ、未熟な身体には負担となってしまします。指導するコーチの実力も試されます。

毎日歯磨きをすると教えるように、毎日ストレッチをすると教えることも大事なのではないでしょうか。

 

筋力維持に関しては、体幹レーニングが最も重要です。

「Dog &Cat」・「プランク」など色々と出てくると思いますので、調べてみて下さい。ちゃんとした姿勢を強調する動画であれば、どれでも大差ないと思います。

 

エビデンスのない民間療法や変なお薬にはご注意を。

 

以上、ご意見・ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい