闇医者Blog

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指関節の痛み(ブシャール結節)

ジョイフルでランチをしていると、時々「寒くなると節々が痛む」とか「朝の手のこわばりがある」などおばちゃん達の声が聞こえます。

医療関係者が聞けば、リウマチかなぁと思うところですが、本日はリウマチの話はしません。

 

今回は、指関節の痛みについて解説致します。

以降は、「Alexander CJ. Heberden's and Bouchard's nodes. Ann Rheum Dis. 1999 Nov;58(11):675-8」の論文をもとに、参照文献を孫引きしながら調べております。

指関節の痛み

指関節は、第1関節、第2関節があり、それぞれ、「DIP関節」、「PIP関節」と言います。

指の痛みといえば、リウマチを考える人が多いと思いますが、今回は「PIP関節痛」をピンポイントで解説致します。

 

PIP関節痛は、主に変形性指関節症の症状として現れます。

変形性関節症の定義は、「関節裂隙の狭小化」・「骨棘形成」ですが、指に関しては、特徴的な所見に、「粘液嚢腫(ミューカシスト)」という関節周囲の腫瘤があります。

その腫瘤は関節によって名称が異なり、第1関節(DIP関節)にできるものを「へバーデン結節」、第2関節(PIP関節)にできるものを「ブシャール結節」と言います。

「腫瘤=痛み」というわけではありませんが、腫瘤の存在は、変形性指関節症の存在を示唆します。

※名前の由来は、Dr.Bouchardが1884年に初めて報告したことからきています。

Bouchard結節(環指、小指)

 

ブシャール結節は、「背外側型」・「外側型」が存在します。これは、伸筋腱と側副靱帯の間に力学的影響が少ない空間が存在するからです。(下図参照)

疫学的には、「中年女性」に多く、「家族性」があるとされています。

Bouchard結節(疫学・分類)

 

原因

ブシャール結節の原因は、多くの情報サイトで「まだ解明できていない」と出るでしょう。

確かにその通りなのですが、前述したように、中年女性に多く、家族性があることは分かっています。

そのことからか、「妊娠・出産や更年期障害によるホルモンバランスの低下」、「加齢」、「腎機能低下」、「手先の使い過ぎ」などが何となく原因として挙げられることがあります。

 

一方で、「腱鞘炎により屈筋腱がA1 pullyで狭窄すること」が「PIP関節〜A1 pully間で浅指屈筋腱(FDS)の緊張」を引き起こすことで、「PIP関節に慢性的な牽引力」が働き、それが「PIP関節痛」や「関節症の進行とブシャール結節の形成」を引き起こすという報告もあります。

 

めちゃくちゃ難しいですね。

 

所謂、「屈筋腱腱鞘炎(ばね指/断発指)」が「PIP関節痛」に密接な関連があるということです。

実際に、「ばね指」では、浅指屈筋腱(FDS)が病理学的に変性肥大や炎症細胞の浸潤を呈することが報告されており、PIP関節に対する影響は、「加齢」と「罹病期間」がリスクファクターとされています。

※PIP関節に対する影響=「疼痛」と「屈曲拘縮」

 

これらのことから、「中年女性」「家族性(遺伝)」「屈筋腱腱鞘炎(ばね指)」が「PIP関節痛」にとっての原因である可能性が高いです。

 

治療

こちらに関しては残念なお知らせになりますが、現状では「良い」手術は存在しません。

というのも、インプラントを使用した確立した手術と異なり、術後成績が安定していないからです。

どんな手術があるかというと、①FDS部分切除術、②関節固定術、③人工指関節置換術です。

 

 

ここからは個人的な見解です。

手術に関しては、術式を比較検討した論文が存在しないため、どの手術が最も良いということはできません。

FDS部分切除術では、PIP関節の屈曲拘縮が30°以下であれば、術後にFull Gripが可能であったとの報告があるので、個人的にはファーストチョイスはありかなと思います。

というのも、②関節固定術はPIP関節が動かせなくなるので不便だということ、③人工指関節置換術は術後成績が安定しないためです。これらは、最悪、①がうまくいかなかった場合でも修正がある程度可能なので、その後に検討してもいいのではないでしょうか。

 

指の痛みは、「頑張った証」だと思います。

「PIP関節痛(ブシャール結節)」や「ばね指」が中年女性が多いのは、家事など手を酷使する作業が多いためです。

日本人女性は我慢強い人が多いので、困った時は早めに相談して下さいね。

 

ご意見・ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい