いよいよ、Jリーグが開幕しますね。
チームドクターとして帯同することもあり、オフシーズンから選手の怪我には専属トレーナー一同、十分に注意しています。
さて、今回は、スポーツ選手であれば1度は聞いたことがある「Groin Pain Syndrome(鼠径部痛症候群)」について解説致します。
以降は、「Weir A et al. Doha agreement meeting on terminology and definitions in groin pain in athletes. Br J Sports Med. 2015 Jun;49(12):768-74」の論文をもとに、参照文献を孫引きしながら調べております。
Groin Pain Syndrome(鼠径部痛症候群)は、「全身的機能不全が鼠径周辺部の器質的疾患発生に関与し、運動時に鼠径周辺部に様々な痛みを起こす疾患」と定義されます。
※この疾患概念は、1991年にDr.Gilmoreによって提唱されました。
簡単に言うと、「身体の硬さ」や「本人が自覚しない動きの癖」に伴う身体への負担の蓄積が原因で鼠径部周囲に障害が起こる疾患ということです。
つまり、「Overuse Injury(オーバユース障害)」です。
下図のように、解剖学的・力学的な原因を解説している論文もあり、特に「キック動作」のあるスポーツで多く見られます。
診断基準や疾患分類も定義されています。
診断基準に関しては、下図のいずれかが当てはまれば、疑う感じでしょうか。現場では、いろいろな症状の訴えがあります。
疾患分類に関しては、「Dohe分類」が用いられており、下図のように「Adductor(内転筋関連)」・「Iliopsoas(腸腰筋関連)」・「Inguinal(鼠径部関連)」・「Pubic(恥骨関連)」・「Hip(股関節関連)」に分類されます。
その中で最も多いのは「Adductor(内転筋関連)」になります。
選手やトレーナー、もちろん監督にとって最も重要なのは、試合復帰までの期間になります。
下図は、スポーツ選手の怪我で忘れてはならない「Hamstring Injury(太ももの肉離れ)」と比較したものです。
それぞれの発生率と離脱期間を記載しております。
また、「Hamstring Injury」では、重症度で1度、2度、3度と分類でき、それぞれの離脱期間がおおよそ、2週、6週、20週とされています。
発生率は同じくらいですが、総離脱期間は、「Groin Pain Syndrome」が長いですね。
臨床現場の感覚でもそうだろうと思います。
最後になりますが、「難治性Groin Pain」も存在します。
その画像上の特徴を一部紹介しますが、臨床症状でも特徴になる所見は存在します。
ここからは個人的な見解です。
スポーツ選手に限らず、怪我をしやすい人はもれなく「身体が硬い」です。
以前にも「腰痛」で述べましたが、ストレッチ頑張りましょう。
また、冒頭でも述べましたが、いよいよJリーグが開幕します。
その陰では、練習に励む選手と同様にメディカルスタッフも一丸となって試合に臨みます。
熱烈なファンの皆さんであれば、チームのホームページから怪我人の情報など得ることもあると思いますが、どうか離脱期間も含めて選手を応援してあげて下さいね。
ご意見・ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。
おしまい