闇医者Blog

闇医者です。界隈の言えないこととか書いてます。

それでもサプリメントを飲みたい

小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」の報道から時間も経ち、サプリメントへの警戒が緩んだのでしょうか。

ここ最近になって、立て続けにサプリメントの相談をされることがありました。

yamiishasan.hatenablog.com

 

ニュース見てないのかな?

忘れたのかな?

と思いつつ、お話を聞いていると、お薬飲んでもダメならこっちに頼りたくなるとのこと。

ちょうどこの時期は、多くの医師の異動があり、新しい職場では、初めましての患者さんばかり。

今回も初めましてで相談されました。

 

私自身は基本的には、推奨しないスタンスです。

持参されたサプリメントを見ると「服用にあたっては医師に相談すること」と記載がありました。

そういうことか、、

逆に患者さんはわざわざ相談してくれたようです。

なんかごめんなさいと思いつつ、外来を終えて思い返すと、「なんかあった時の責任は医師」になるのかな?と少し複雑な気持ちになりました。

現実は、小林製薬の件でも分かるように会社自身に相当な責任を求められています。

「治療中の方は、服用にあたって医師に相談すること」という記載は無責任すぎるので、「トラブルの際は自社にお問い合わせ下さい」に変更する方がいいのではないでしょうか?

 

今回は、徒然なるままに書いたので、特に情報発信はないですww

おしまい。

PRP療法の安全性とは?

近年、美容医療の分野では革新的な治療法が急速に発展しています。

その中でも注目を集めるのが、PRP(Platelet-Rich Plasma)療法です。

PRP療法は、自身の血液から取り出した成分を利用して、肌の若返りや髪の再生など、さまざまな美容目的に活用されています。

しかしながら、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor:bFGF)を添加することで、皮下組織の異常な増殖による合併症も報告されており、リスクにも十分に注意する必要があります。

この記事では、PRP療法が美容医療に与える影響について探ってみたいと思います。

以降は、「Buzalaf MAR, Levy FM. Autologous platelet concentrates for facial rejuvenation. J Appl Oral Sci. 2022 Sep 5;30:e20220020」を元に参考文献を孫引きして調べております。

PRP療法とは?

PRP療法の基本的な仕組みは、患者の血液から血小板を高濃度で抽出し、それを再び患部に注入することで、細胞の再生や修復を促進するというものです。

血小板には成長因子が豊富に含まれており、これが組織の再生を促す働きを担っています。

血液中の血小板の正常な濃度は、150,000 ~ 450,000/μL の範囲です。

PRPは、定義上、組織治癒を促進するために 1,000,000 個/μL以上の血小板を含む必要があり、末梢血よりも 4 ~ 8 倍高い血小板濃度を持っています。

PRP中の成長因子の濃度と血小板の間には相関関係が報告されていますが、最も効果的な濃度はまだ分かっていません。(濃すぎるとダメという報告もある)

 

PRP療法の美容医療への応用

PRP療法は、美容皮膚科領域において、肌の若返りや美白効果を求める患者にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。

以前に少し解説しましたが、皮膚の老化により、断片化したコラーゲン線維が蓄積し、新しいコラーゲン線維の成長が妨げられます。(以前の記事を参照して下さい↓)

yamiishasan.hatenablog.com

PRPに含まれる成長因子は、肌のコラーゲンやエラスチンの生成を促進、ヒアルロン酸の合成を増加させます。

さらに、活性化された血小板は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1,3)を発現し、断片化した古いコラーゲン線維を除去します。

これらの効果により、「肌の再生(リモデリング)を促す効果」が期待されています。

ちなみに、美容医療診療指針では、PRP 療法の適応となるシワは,「小ジワ(ちりめんジワ)「中ジワ」です。

それ以上のシワに対しては、PRP単独で有効な効果を示された論文すらないため、勧められた場合は注意して下さい。

 

PRP療法の安全性とその効果

安全性に関しては、いずれの報告例も一過性の軽度な合併症で、継続的、あるいは重篤なものはありません。(これについても過去に言及しましたが、美容医療系の論文は正直信用できないんですよねw)

治療に使用するのは患者自身の血液の成分であるため、アレルギー反応や拒絶反応のリスクがほとんどなく、手術を伴わないため、リカバリー期間も短く、日常生活に与える影響が少ないのがメリットです。

しかしながら、PRP療法には効果や持続性に個人差があることも指摘されているため、複数回の注入が必要な場合もあります。

そのため、治療プランをしっかりと理解し、適切な期待値を持つことが重要です。

なぜなら、欧米や日本のPRP療法による顔面のシワとたるみの効果はいずれも50%未満であるとするものがほとんどです。

また,信頼性の高いランダム化臨床試験「split face study」の結果では、対照群の生理食塩水よりも有意に優れた結果は得られておりません。

以上より、PRP療法は、治療効果は弱いものの比較的安全性が高いことから、希望する患者には弱く推奨される治療法であると考えられています。

 

まとめ

PRP療法は美容医療の分野において大きな進歩をもたらしています。

その安全性と幅広い応用範囲から、多くの患者にとって魅力的な選択肢となっています。

しかし、個々の患者の状態やニーズに応じて、適切な治療法を選択することが重要です。

今後もPRP療法の研究と開発が進み、美容医療のさらなる進化を期待したいところです。

 

最後に

細胞増殖と組織修復を促進する役割で知られるbFGFと組み合わせると、PRPの再生効果が強化されると考えて、PRPに混ぜて使用する報告が出てきました。

理論的には、この組み合わせにより審美的処置の結果が改善される可能性があるとのことです。

しかし、美容医療における PRP+bFGF 療法の有効性を裏付ける証拠は限られており、意見が分かれています。

そもそも認可されていませんし、推奨もされていないのでのでご注意を!!!

皮膚の若返り、発毛、創傷治癒に関して肯定的な結果を示した研究がある一方で、矛盾する結果を報告したり、対照治療と比較して有意な差が見出されなかったりする研究もあります。

某クリニックから大規模症例報告が論文発表されておりますが、やはり、これを読んでも人に勧めることはできません。(ツッコミどころ満載で指摘する気も起きません)

検討されている方は、自己責任であることは承知だとは思いますが、もっと研究が進むまで待った方が良いと思います。

 

ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい

大学病院の教育・研究時間の問題について

近年、医師の研究時間が減少しているという報告が医療界で相次いでいます。

この傾向は、医療の「品質」「革新性」に関わる重要な要素であり、深刻な懸念を引き起こしています。

なぜ医師の研究時間が減少しているのか、その要因と影響を調べてみました。

今回は、少し専門的過ぎる感があります。

大学病院で働く医師の環境を含めて解説しておりますので、どんな感じか知りたいなぁ〜って思う優しい人は読んでみて下さいww

早速ですが、要因については、以下の4点があると考えます。

 1. 診療時間の増加

 2. 医療制度の変化

 3. 学術環境の変化

 4. 専門性の深化

 

診療時間の増加について

現代の医療現場では、患者数の増加や医療技術の進歩に伴い、医師の診療時間増加しています。

患者さんのニーズに応えるために、医師は診療に多くの時間を費やし、研究活動に割ける時間が減っている可能性があります。

以下は、文部科学省「今後の医学教育の在り方に関する検討会」の資料を参照しています。

臨床医学系教員の研究時間推移

図で示すように、近年では講師を除く役職の診療時間が大幅に増加し、研究時間減少しています。

※ちなみに、大学病院の偉い順:教授=看護師>准教授>講師>助教>修練医>>>研修医

これは、後述しますが、大学病院に求められるものが高度な医療である以上、年々、進歩する医療技術の対応に追われていることに他なりません。

必要か不必要かに関わらず、その判断も含めて、近隣の病院から多くの患者さんが紹介されてきます。

大学病院に受診した経験がある人には分かると思いますが、死ぬほど待ち時間が長いです。

これは、「そもそも紹介される患者さんが、近隣の病院でも判断に困る症例であること」、「そんな症例の問診から診察、診断は当然時間がかかること」、「最終的に専門家が様々な治療法からニーズに合ったものを説明する時間が必要であること」などが原因です。

患者さんが待っている間、医師は休むことなく診察しているので、診療時間はどんどん伸びていきます。

※ほんとは待たせたくないんです。ごめんなさい。

 

医療制度の変化

医療制度の変化により、医師は経済的な圧力や実務上の負担が増大しています。

診療報酬の改定や患者さんのニーズに対応するため、医師は業務実績に関わらない研究活動よりも実務に時間を割くことになります。

大学病院の経営は火の車状態です。

なぜなら、大学病院は診療報酬(保険点数)の採算に合わない検査や治療を最後の砦として行わなければならないからです。

それが医療の本質でしょうと言われればそれまでですし、利益を追求しているように誤解を与えますが、それでもそこで働いている職員がいるので健全な経営をするべきだと思います。

※診療報酬次第なので、どんなに頑張ってもどうしようもないのですが。。

実情を以下の図でお示しいたします。国公立の病院は概ね損益率はマイナスです。

国公立病院の損益率

医師がお金の話をすると反感を買うかもしれませんが、敢えて少し触れていきます。

大学病院の役職別の平均給与ですが、

研修医の平均年収:430万 (20代後半大卒男性の平均年収:370万(賞与含まず))

助教の平均年収:530万 (30代後半大卒男性の平均年収:500万(賞与含まず))

講師の平均年収:630万 (40代前半大卒男性の平均年収:540万(賞与含まず))

准教授の平均年収:720万 (40代後半大卒男性の平均年収:580万(賞与含まず))

教授の平均年収:900万 (比較対象が分からないです。副社長?)

です。これは大学病院から支給される給与です。

※医師転職コンシェルジュ / 賃金構想基本統計調査(厚生労働省)より転載

私はもっと少なかったのですが、地域によって差がありますので、まぁまぁ納得の値なのかなと思います。

これだけ見れば、世間に与えられている印象と比較して低いと感じたのではないでしょうか?

実際は、研修医を除いて、+αで近隣病院への勤務(バイト)や休日/夜間の当直業務を行います。

この中で研究をしようと思ったら、通常の診療時間後に行うことになるのですが、動物実験・細胞実験などはやり始めたら余裕で数時間かかるので、めちゃめちゃしんどいです。

指示は出せても、自分でしようとは中々思わないでしょう。

※通常の診療後が何時になるのかは察して下さい。

 

学術環境の変化 / 専門性の深化

医学の進歩は急速であり、新たな研究や治療法が頻繁に登場しています。

さらに、ますます専門化しており、自身の専門分野において高度な知識を持つ必要があります。

医師は最新の情報や技術を追いかける必要があり、そのために研究に時間を割く余裕が減少している可能性があります。

幸か不幸か、現代では、情報をすぐに手に入れることができるので最悪ですw

カンファレンスでは、偉い先生達に「これが患者さんにとってベストだ!」と考える治療を納得してもらうために、プレゼンしないといけません。

そのためには多くの論文を読む必要があります。

今では良い経験をしたと思えますが、大変でした。

学会発表を聞いていると、この経験がある先生の多くは発表が上手だと思います。

そういった先生はもれなく、患者さんへの説明も上手です。

 

どういった影響が考えられるか?

医師の研究時間の減少は、医療の「品質」「安全性」に影響を及ぼす可能性があります。

正しい研究方法を知らないと、間違った情報が世に流れることになります。

普通はありえないと思いますが、世の中にはお金を積めば通るような、ハゲタカジャーナルと呼ばれるものがあります。

この話は、また別の機会に。

医師の研究活動を支援するための制度や環境の整備が求められると思います。

 

 

これらの話は、臨床の最前線で働く医師だけではなく、研究をしたくて大学院生になった医師にも起こっています。

日本の大学院は世界的には珍しくお金を払って入学しないといけないので、毎年50-60万程度の学費を納めないといけません。

したがって、大学院医師は働きながら研究しないといけないので、研究=働くことである一般的な研究職の方とは少し違います。

※大学院医師は多くの場合が無給医なので、バイトをしないと死にます。

研究者が政治に関わっている姿が想像できないので、政府が実情の把握をできていないのは仕方がないのかなとも思いますが、このままでは、間違いなく世界に置いていかれます。

 

いや、ほんとに、裏金とかキックバックとかしょうもないことでバタバタしている姿を見ると情けないです。

完全に愚痴ですw

 

ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい。

新型コロナワクチンを217回摂取した男

2024年3月4日に衝撃的な論文が世界に発信されました。

「Adaptive immune responses are larger and functionally preserved in a hypervaccinated individual. Lancet Infect Dis. 2024 Mar 4:S1473-3099(24)00134-8」

ドイツのマクデブルグ在住の62歳男性が、意図的かつ個人的理由により、29ヶ月間で新型コロナウイルスに対して217のワクチン接種を受けました。

ワクチンの高頻度反復摂取の症例は倫理的観点から存在しないため、その利点・限界・リスクの評価のために、男性の自発的な協力で研究が始まりました。

ちなみに、この男性は詐欺容疑で捜査されましたが、刑事告訴はされませんでした。

※絶対、自発的ではないでしょうww

 

比較対象は、mRNAワクチンを計3回受けている29人(Control群)でした。

新型コロナウイルスに対する「抗体数」や「反応の程度」、「副作用の程度」を評価しています。

内容はかなり専門的なので割愛しますが、誤解を恐れずに要約すると、「ワクチンの高頻度反復摂取は有害事象を起こさず、ウイルスの抗体数や免疫細胞は、一般的な摂取回数のControl群に比べて増加していました。しかしながら、本質的に利益となる効果はありませんでした」

注:ワクチンの反復摂取は推奨されていません。

 

びっくりですね。

217回ワクチンを打っても何もなかったようです。

利益とかの前に、害がなかったことが注目すべき点ですね。

ワクチン接種をあまりに何度も繰り返すと免疫細胞が抗原に慣れてしまい、免疫機能が低下してしまうという声も上がっている中で、この結果です。

 

最後にこの男性には「ギネス記録、おめでとう」とだけ伝えておきましょう。

 

ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい。

腎機能低下の意外な理由

小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」が連日ニュースで取り上げられていますね。

健康被害の原因は「腎機能障害」とされています。

今回は、世界に発信された論文の中から、「腎機能低下の意外な理由」を3つ報告します。

以降は、「Ambient heat and acute kidney injury: case-crossover analysis of 1 354 675 automated e-alert episodes linked to high-resolution climate data. Lancet Planet Health. 2024 Mar;8(3):e156-e162」「Sweetened Beverage Intake and Incident Chronic Kidney Disease in the UK Biobank Study. JAMA Netw Open. 2024 Feb 5;7(2):e2356885」「Income Level and Impaired Kidney Function Among Working Adults in Japan. JAMA Health Forum. 2024 Mar 1;5(3):e235445」の論文を参考に調べております。

 

結論から申し上げると以下の3つで腎機能低下が報告されています。

 1. 気温上昇

 2. 人工甘味料の摂取

 3. 低所得

2の「人工甘味料」は何となく身体に悪いなとは思っているでしょうが、1,3は意外ですね。

それでは、以下で解説していきます。

 

気温上昇は急性腎障害のリスクになり得るか?

気温の高い環境で、適切な休憩と水分補給なしに働いている労働者は、腎機能低下や腎臓病を発症するリスクがあることは報告されていました。

今回は、気温上昇により、一般の人にも腎機能障害が起こるのかどうか、急性腎障害と地域の最高気温を紐付けして関連を調べています。

その結果、急性腎障害の発症が最も低かった気温は17でした。

気温32℃の日と比較すると、1.625だそうです。

なるべく涼しい所にいるようにしたいですね。

 

砂糖や人工甘味料は腎臓に悪い?

砂糖や人工甘味料の摂取量と、肥満や心血管リスクの関連を示した研究が増えています。

しかし、加糖飲料、人工甘味料添加飲料、天然果汁飲料の摂取が腎臓に及ぼす影響は明らかではありませんでした。

何となく悪そうだなという疑問に答えてくれた論文です。

各飲料の摂取習慣については、250mLを1杯の目安とし、1日当たりの摂取量に基づいて、飲まない人(0杯)、1杯以下の人(0-1杯)、1杯以上の人に分類しています。

その結果、「加糖飲料」の場合は、摂取しない人に比べて、1日1杯以上摂取している人は腎障害のリスクは1.19でした。

人工甘味料添加飲料」の場合は、摂取しない人に比べて、1日1杯以下の人は1.10、1杯以上の人では1.26でした。

「天然果汁飲料」の場合は、腎障害のリスクと関連はありませんでした。

実際にどのくらいの量で腎障害が起こるとは明確には言えませんが、摂取を控えることは推奨できそうですね。

 

低所得者は腎機能低下が速い?

米国では、慢性腎臓病(CKD)の発症や進行に、社会経済的要因(所得, 学歴, 居住地など)が関係しており、社会経済的地位が低い人ほどCKDリスクが高いことが報告されています。

しかしながら、日本のように国民皆保険制度があり、年1回の健康診断が企業に義務付けられている国でも、米国と同様に所得格差がCKDリスクと関連するかは明らかではありませんでした。

所得を10段階に分類し、最高(平均月収約82万)、最低(14万)として比較しています。

その結果、CKDの急速な進行のリスクに関しては、最高所得と比較して、最低所得の場合は1.70でした。

また、透析・腎移植のリスクに関しては、1.65でした。

ただ、これには世帯所得は含まれておりませんので、一概には言えないと思います。

 

ここからは個人的に見解になります。

完全に個人的な見解なのですが、飲み物を買う時は同じお金を払うならなるべくカロリーが高いものを買うようにしています。

何となく勿体無いと思っちゃいます。

今度からは、マイ水筒にお茶にします。

あとは、夏季休暇で沖縄やハワイに行く人は腎臓を痛めつけている可能性があるので注意しましょうw

 

ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい