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PRP療法の安全性とは?

近年、美容医療の分野では革新的な治療法が急速に発展しています。

その中でも注目を集めるのが、PRP(Platelet-Rich Plasma)療法です。

PRP療法は、自身の血液から取り出した成分を利用して、肌の若返りや髪の再生など、さまざまな美容目的に活用されています。

しかしながら、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor:bFGF)を添加することで、皮下組織の異常な増殖による合併症も報告されており、リスクにも十分に注意する必要があります。

この記事では、PRP療法が美容医療に与える影響について探ってみたいと思います。

以降は、「Buzalaf MAR, Levy FM. Autologous platelet concentrates for facial rejuvenation. J Appl Oral Sci. 2022 Sep 5;30:e20220020」を元に参考文献を孫引きして調べております。

PRP療法とは?

PRP療法の基本的な仕組みは、患者の血液から血小板を高濃度で抽出し、それを再び患部に注入することで、細胞の再生や修復を促進するというものです。

血小板には成長因子が豊富に含まれており、これが組織の再生を促す働きを担っています。

血液中の血小板の正常な濃度は、150,000 ~ 450,000/μL の範囲です。

PRPは、定義上、組織治癒を促進するために 1,000,000 個/μL以上の血小板を含む必要があり、末梢血よりも 4 ~ 8 倍高い血小板濃度を持っています。

PRP中の成長因子の濃度と血小板の間には相関関係が報告されていますが、最も効果的な濃度はまだ分かっていません。(濃すぎるとダメという報告もある)

 

PRP療法の美容医療への応用

PRP療法は、美容皮膚科領域において、肌の若返りや美白効果を求める患者にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。

以前に少し解説しましたが、皮膚の老化により、断片化したコラーゲン線維が蓄積し、新しいコラーゲン線維の成長が妨げられます。(以前の記事を参照して下さい↓)

yamiishasan.hatenablog.com

PRPに含まれる成長因子は、肌のコラーゲンやエラスチンの生成を促進、ヒアルロン酸の合成を増加させます。

さらに、活性化された血小板は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1,3)を発現し、断片化した古いコラーゲン線維を除去します。

これらの効果により、「肌の再生(リモデリング)を促す効果」が期待されています。

ちなみに、美容医療診療指針では、PRP 療法の適応となるシワは,「小ジワ(ちりめんジワ)「中ジワ」です。

それ以上のシワに対しては、PRP単独で有効な効果を示された論文すらないため、勧められた場合は注意して下さい。

 

PRP療法の安全性とその効果

安全性に関しては、いずれの報告例も一過性の軽度な合併症で、継続的、あるいは重篤なものはありません。(これについても過去に言及しましたが、美容医療系の論文は正直信用できないんですよねw)

治療に使用するのは患者自身の血液の成分であるため、アレルギー反応や拒絶反応のリスクがほとんどなく、手術を伴わないため、リカバリー期間も短く、日常生活に与える影響が少ないのがメリットです。

しかしながら、PRP療法には効果や持続性に個人差があることも指摘されているため、複数回の注入が必要な場合もあります。

そのため、治療プランをしっかりと理解し、適切な期待値を持つことが重要です。

なぜなら、欧米や日本のPRP療法による顔面のシワとたるみの効果はいずれも50%未満であるとするものがほとんどです。

また,信頼性の高いランダム化臨床試験「split face study」の結果では、対照群の生理食塩水よりも有意に優れた結果は得られておりません。

以上より、PRP療法は、治療効果は弱いものの比較的安全性が高いことから、希望する患者には弱く推奨される治療法であると考えられています。

 

まとめ

PRP療法は美容医療の分野において大きな進歩をもたらしています。

その安全性と幅広い応用範囲から、多くの患者にとって魅力的な選択肢となっています。

しかし、個々の患者の状態やニーズに応じて、適切な治療法を選択することが重要です。

今後もPRP療法の研究と開発が進み、美容医療のさらなる進化を期待したいところです。

 

最後に

細胞増殖と組織修復を促進する役割で知られるbFGFと組み合わせると、PRPの再生効果が強化されると考えて、PRPに混ぜて使用する報告が出てきました。

理論的には、この組み合わせにより審美的処置の結果が改善される可能性があるとのことです。

しかし、美容医療における PRP+bFGF 療法の有効性を裏付ける証拠は限られており、意見が分かれています。

そもそも認可されていませんし、推奨もされていないのでのでご注意を!!!

皮膚の若返り、発毛、創傷治癒に関して肯定的な結果を示した研究がある一方で、矛盾する結果を報告したり、対照治療と比較して有意な差が見出されなかったりする研究もあります。

某クリニックから大規模症例報告が論文発表されておりますが、やはり、これを読んでも人に勧めることはできません。(ツッコミどころ満載で指摘する気も起きません)

検討されている方は、自己責任であることは承知だとは思いますが、もっと研究が進むまで待った方が良いと思います。

 

ご意見、ご感想や間違いのご指摘をお待ちしております。

おしまい